テストの経験は回り道ではありません。開発の現場で頼りにされる力になります。 丁寧なバグ再現や境界値の考え方、仕様の読み取り、手順の言語化はそのまま設計・コードレビュー・テスト自動化に活きます。
段階を踏んで進めば十分です。小さな実践を重ねていけば、“作る側のITエンジニア”へ一歩ずつ近づいていけます。
この記事は、以下のような状況に心当たりのある方に向けての内容です。
- テスト中心で実装の機会が少ない
- SESで配属先に左右されやすい
- 学習は続けているのに、成果物の見せ方が分からない
押さえておきたいのは次の3点です。
- テストの経験を、開発の言葉に言い換える。
- 熱意の言葉より、手元の成果物で語る。
- 求人を見極めて、“配属ガチャ”の不安を減らす。
まずは自分の強みが活きやすい場所を見つけること。選択が軽くなり、行動がスムーズになります。
転職の全体戦略:3つの軸で進める
学ぶ・作る・選ぶを“同じ重さ”で回すと、景色が一気に変わります。学ぶだけ、応募だけでは結果につながりにくいです。「作る=見える形にする」「選ぶ=見極める」を、「学び=継続」とセットで回していきましょう。
1) 3つの軸
まず全体の流れを確認してから、次にやることを一つずつ進めます。
- 学習と可視化:言語1つに集中→ミニアプリ→GitHub公開→README
- 選考設計:職務経歴を“テスト→設計・改善”に言い換え/求人票の見極め/逆質問
- 実務に近い経験:副業・OSS・社内異動で要件→実装→納品を体験
小さく作って公開するたび、言葉の説得力が増していきます。
2) 30/60/90日の実行テーブル
行動の目安を先に決めておくと、迷いが減ります。
期間 | 重点 | 具体アクション |
---|---|---|
0~30日 | 基礎と1作目 | 言語基礎/CRUDミニアプリ/READMEひな形/Git・Issue運用開始 |
31~60日 | 応用と2作目 | API/認証/ミニアプリ/テスト自動化(Playwright/Cypress 等) |
61~90日 | 仕上げと応募 | ミニアプリ(品質観点を強化)/技術ブログ3本/模擬面接/応募開始 |
3) 言語と用途の相性
迷ったときは、「作りたい体験」から選ぶと続きやすいです。
用途 | 例 | 言語・技術の一例 |
---|---|---|
Webフロント | SPA/フォーム/ダッシュボード | TypeScript, React, Vite |
Webバックエンド | API/業務系CRUD | Java(Spring), Python(FastAPI), Node.js |
テスト自動化 | E2E/回帰/受入 | Playwright, Cypress, Jest, Pytest |
社内ツール | 申請/ログ集計/可視化 | Python, GAS, TypeScript, SQLite |
4) 選考のコツ
書類・面接で伝わり方が変わるポイントを、先に意識しておきます。
- 職務経歴書は「作業の列挙」ではなく「改善の物語」
- 求人の赤信号を避ける(配属未定/工程不明/評価基準不明)
- 逆質問で配属の決まり方・レビュー体制・離職率を確認 “働く様子が目に浮かぶ”説明が、評価を分けます。
テストで培った強みを開発の言葉に置き換える
テスターの経験から、すでに品質を設計する視点を持っているはずです。 再現条件の特定、境界値・同値分割、手順の標準化、欠陥の原因分析は入力検証・例外設計・ログ設計・テストの書き方に自然につながります。
1) スキルの対応関係(Before→After)
テストで培った強みを、開発側の成果に結びつけていきます。
テスト経験(Before) | 開発での活かし方(After) | 面接・書類での言い回し例 |
---|---|---|
再現手順の明確化 | バグ再現→ユニット/統合テスト追加 | 「再現条件をコード化し、再発防止まで担保」 |
境界値・同値分割 | 入力検証・APIのエッジ設計 | 「境界値を設計に反映、異常系テストを先に用意」 |
手順書作成 | README/設計メモ | 「利用者視点の手順をREADMEへ反映」 |
エビデンス管理 | ログ出力・監視の初期設計 | 「再現ログと簡易カバレッジを可視化」 |
欠陥分析 | 防止策・リファクタ提案 | 「原因を型・バリデーションで封じる提案」 |
2) 職務経歴の言い換えミニテンプレ
言葉に迷ったとき、そのまま使える短い例です。
- 「不具合再現の標準化により再検証時間を短縮。再発防止としてユニットテストを追加。」
- 「仕様の曖昧箇所を洗い出し→受入基準を明確化→E2E自動化で手戻りを削減。」 数字がなくても、“前→後”の変化が伝われば十分です。
3) ポートフォリオ題材(品質×実装)
はじめの1作を決めやすい題材から。作り切る感触を大切に。
- バグ再現→修正→テスト追加を1リポジトリで完結
- E2E自動化デモ(ログイン→CRUD→権限)を最小構成で
- 社内ツール系(申請ワークフロー/ログ集計)で“業務×品質”を表現
READMEは「狙い/使い方/テスト観点/今後の改善」の4点だけ。 見る人は、コードと同じくらい思考の跡を見ています。 小さくても、伝わるように置いておけばOKです。
市場動向と求人のリアル
採用側が強く見ているのは“自走”と“証拠”。 未経験枠の数は読みにくくても、公開している人には安定してチャンスが巡ります。テスターとしての経験があるぶん、品質前提の設計や自動化について、他の人よりスムーズに話を進められます。
1) 需要が強い領域
学ぶテーマと応募先を絞るほど、成果を早く実感できます。
- Web/業務系のバックエンド・フロントエンド(新機能と保守が並走)
- テスト自動化/SDET(開発と品質の橋渡し)
- 内製化の社内開発・社内SE(小さな改善の積み上げが評価されやすい)
2) 企業が見るチェックポイント
書類・面接での評価が分かれやすいところを、事前に整えておきます。
- Git運用(Issue/PR/レビュー)の実体験
- README・設計メモで意思決定の経緯が読めること
- “テストを書く”文化への理解と実践
- ログ・例外・入力検証など、品質を意識した実装 “普段どんなふうに作っているか”が伝われば、強いです。
3) 求人の見極めテーブル(赤信号と安心材料)
入社後のミスマッチを減らすため、見ておくと安心な観点です。
観点 | 赤信号の例 | 安心材料の例 |
---|---|---|
配属/工程 | 配属未定/工程不明 | 配属の決まり方が公開/レビュー体制の記載 |
評価制度 | 成果基準が曖昧 | 評価項目・昇給サイクルの明記 |
離職/育成 | 直近離職率が非公開 | 育成方針・勉強会・メンター制度 |
働き方 | 残業の中央値が不明 | 残業中央値・リモート実績の提示 |
技術選定 | 理由が属人的 | 選定理由・刷新の方針が文書で確認できる |
4) 逆質問のヒント
面接の最後に、本当に知りたいことを明確に確かめておきます。
- 配属の流れと例外時の対応(目的:配属ガチャの回避)
- レビュー体制・頻度・具体例(目的:育成と品質の文化)
- 直近1年の離職率と理由(目的:チームの健全性)
- 残業の中央値と繁忙期の山(目的:学習時間の確保)
“学びの速さ”より、“伝わる形で残しているか”。 小さな公開を重ねるほど、チャンスは近づきます。
やってはいけない落とし穴と回避策
つまずきは早めに小さく対処すれば、必ず取り戻せます。 ここでは、ありがちな落とし穴を先に把握してから、明日から取れる回避アクションを具体化します。
落とし穴 | 兆候 | 起きがちな結果 | 回避策 |
---|---|---|---|
学習だけで公開がない | ローカルに作品が溜まる/READMEが空白 | 実力が伝わらない | 週1でGitHubにPushとREADME更新を必ず実施 |
配属未定の求人に突入 | 工程・役割が曖昧 | テスト固定で抜け出せない | 面接で配属決定プロセスとレビュー体制を具体確認 |
作業列挙の職務経歴 | 「~を担当」の羅列 | 改善力が見えず評価が伸びない | 「前→課題→対応→後」の順で短く書き替える |
“広く浅く”の言語選択 | 技術を次々移る | 何も深まらない | 90日は言語1つ+関連ツールに集中 |
テストの欠如 | 動くが壊れやすい | 品質意識が伝わらない | 失敗→修正→再発防止テストを残す |
指標なしの応募 | 受けっぱなし/振り返りゼロ | 消耗→自信低下 | 週1で通過率・直す点3つ・次回の打ち手を更新 |
ポートフォリオの著作権違反 | 業務コードを流用 | 信用低下 | 自作のみ/擬似データに置換/ライセンス明記 |
長時間の独学だけ | 人との接点がない | レビュー学習が進まない | OSSの小PR/勉強会でLT/社内でミニ共有 |
負荷過多で継続断念 | 計画が厳しすぎる | 途中で止まる | 平日30–60分+週末2–3時間の“最低ライン”で設計 |
1) 逆質問(目的つきで用意)
面接の最後で、働き方のイメージを一緒に確かめましょう。
- 配属決定の流れと例外時の扱い(配属の透明性)
- レビュー体制の頻度・具体例(育成・品質文化)
- 直近1年の離職率と理由(チームの健全性)
- 残業の中央値と繁忙期のピーク(学習時間の確保)
2) 求人票を安全に見るコツ
“説明できないことが多い求人”は、そのまま不確実性です。 工程・評価・配属・残業中央値・技術選定理由が曖昧なら一旦保留。比較対象を2~3社置いて落ち着いて判断します。
学習ロードマップ(30/60/90日)
完璧より“公開の反復”。小さな完成を積み重ねるほど、説得力が増えます。 全体像を把握してから、期間ごとの具体に進みます。
期間 | 重点 | 具体アクション |
---|---|---|
0~30日 | 基礎固め+1作目 | 文法・HTTP・Git/CRUDミニアプリ(ログ・例外・入力検証)/README雛形/Issue運用開始 |
31~60日 | 応用+2作目 | 認証・外部API連携/ミニアプリ(一覧・検索・ページネーション)/E2E自動化導入(Playwright/Cypress等) |
61~90日 | 仕上げ+応募 | ミニアプリ(品質強化/権限/簡易メトリクス)/技術ブログ3本/模擬面接→応募開始 |
1) 週間リズム(無理なく続ける)
続けやすい型を先に決めると、途中で迷って止まることが減ります。
- 1~4日目:実装(1時間タスクに分割)
- 5日目:テスト・リファクタ(Lint/Formatも)
- 6日目:README・スクリーンショット整備(起動手順はコピペ可能に)
- 7日目:振り返り(良かった点/直す点/次回の1タスク)
2) つまずきやすい場面と小さな解消
想定できる壁を先に把握しておくと安心です。
場面 | よくあるつまずき | 小さな解消法 |
---|---|---|
設計 | 要件がぼんやり | 画面・APIの“使い方”を2~3行で先に書く |
実装 | 広げすぎる | 今日は1画面/1API/1テストだけに絞る |
テスト | 何を書くか迷う | 失敗した事象→再現テスト→修正→再テスト |
継続 | 疲れて更新停止 | 日次5分でもREADME更新で“連続”を守る |
3) 学習環境の初期セット
最初の1時間で、“整っている感”を作ると勢いが出ます。
項目 | 目安 | メモ |
---|---|---|
開発環境 | エディタ・拡張機能 | Lint/Format・スニペット |
Git運用 | Issue/PRテンプレ | ラベル・レビュー依頼の流れ |
ドキュメント | README雛形 | 目的/手順/構成/テスト観点/改善 |
自動化 | テスト実行スクリプト | npm test /pytest などワンコマンド |
可視化 | スクショ/録画の手順 | 失敗→修正のビフォーアフターを残す |
4) 言語の選び方(迷ったらこれ)
“作りたい体験”から選ぶと続きます。 Webの手触り→TypeScript、業務APIと堅牢性→Java、試作の速さ→Python。どれも正解。90日はひとつに絞ってじっくり深めれば十分です。
ポートフォリオの作り方(採用が見たい3点)
採用側が見たいのは「動くもの」「読む資料」「テスト」。この3点が揃うと、働くイメージがはっきり伝わります。
1) 動くもの(小さくても直感的)
触った瞬間に理解できる体験を用意しましょう。
- ログイン→CRUD→権限エラーの流れを最小構成で
- 一覧・検索・ページネーションの基本導線
- テストデータ投入スクリプトで試しやすく
2) 読む資料(READMEの芯)
迷わず動かせる説明が、コードの説得力を底上げします。
- 目的/使い方/技術選定理由/テスト観点/今後の改善
- 実行手順はコピペ可能なコマンドで、環境変数も例示
3) テスト(壊れにくさの根拠)
失敗→修正→再発防止の流れを残すことで、品質への視点が伝わります。
- ユニット:入力検証・例外・境界値
- 統合:APIの成功・失敗ケース
- E2E:ログイン→操作→権限
仕上げチェック表
抜け漏れを減らし、加点ポイントを意識して整えていきます。
要素 | 採用側が見る点 | 最低ライン | 加点の例 |
---|---|---|---|
動くもの | 触って理解できるか | ログイン+CRUD | 権限や異常系を丁寧に扱う |
README | 迷わず動かせるか | 目的・手順・構成 | 画面/シーケンス図・意思決定の理由 |
テスト | 壊れにくさの根拠 | 失敗→修正→再現テスト | CIで自動実行・簡易カバレッジ |
コード | 読みやすさ | Lint/Format導入 | 責務分離・例外/ログ/入力検証の設計 |
再現性 | 誰でも動くか | .env.example | Docker/Makeでワンコマンド起動 |
実務近似の経験を積む(副業・OSS・社内移籍)
机上の学習で届かない部分を、小さな実務で埋めていきましょう。 3つのルートを横並びで比較してから、最初の一歩を選びます。
選択肢 | 立ち上げやすさ | 具体アクション | リスク・確認ポイント |
---|---|---|---|
副業 | 〇(小額案件から) | 要件→実装→納品を1スプリント体験 | 機密・権利・納期/就業規則の兼業可否 |
OSS | ◎(今すぐ参加可) | 誤字修正→小PR→Issue→機能追加 | ライセンス・コントリビュートガイド遵守 |
社内移籍 | △(調整が必要) | テスト自動化・内製ツールの兼務 | 上長合意・評価配点・役割の明確化 |
1) 副業:小さく受けて、確実に返す
お金が発生する緊張感が、実務の筋力を育てます。
- 数万円・明確なゴールの案件を選ぶ
- 要件確認→スコープ固定→分割納品
- README・引き継ぎ資料まで含めて納品(再現性を重視)
契約前の確認ミニ表
項目 | 目安 | 注意点 |
---|---|---|
範囲 | 画面/APIの一覧 | 要件の増加は追加見積りに |
納期 | 中間レビュー2回 | 検収条件を文章化 |
権利 | 著作権/再利用 | 実績公開の可否も確認 |
支払い | 振込条件 | 着手金or分割も検討 |
2) OSS:レビュー文化に最速で触れる
世界中のレビューに当たるほど、伸び方は加速します。
- ドキュメント修正→小さなバグ修正→Issue→機能追加の順で段階的に
- PRの指摘対応で「伝わるコード」に磨きがかかる
- 活動ログはブログやREADMEにリンクして可視化
3) 社内移籍・兼務:現在地から橋をかける
現職の延長で“作る側”に触れると、負担が少なく安定します。
- 「テスト自動化担当」「小さな内製ツール」から始める
- 月次で実績を共有し、役割の明確化と評価配点を調整
- 小さな成功(例:手作業10分短縮)を積み上げていく
4) ミニケース(進め方のイメージ)
Aさん(テスト1年・26歳)
1か月目:TypeScript基礎+CRUD、README雛形。
2か月目:E2E自動化デモ、OSSで誤字修正→小PR。
3か月目:副業でフォーム改修、職務経歴を「改善の物語」に更新。応募開始。
ポイント:「小さく作る→公開→他者の目に触れる」を毎週回す。
“小さく受けて、確実に返す”。 この姿勢が積み重なるほど、信頼と次のチャンスは自然と増えていきます。
応募〜面接の攻略
書類と面接は“作る力”を、言葉と証拠で丁寧に伝える場です。 勢いで押すより、相手が判断しやすい材料を順に置いていきましょう。ここでは、書類→面接→課題→逆質問→振り返りの順で、実践で使える形にまとめています。
1) 書類づくりの芯(職務経歴書・履歴書)
まずは“読み手が知りたい順”に情報を置くと伝わりやすくなります。
- 要約(3〜5行):得意領域/最近のアウトプット/開発で活かせる強み
- 役割と成果:前→課題→対応→後(変化が分かれば数値がなくても可)
- ポートフォリオ:GitHub・デモURL・README(起動手順はコピペ可)
- 発信・学び:技術ブログ、OSSのPR、登壇
要素 | NG例 | OK例 |
---|---|---|
職務要約 | 仕事内容だけを列挙 | 強み×最近の成果×志向を一文で |
職務詳細 | 「テストを担当」 | 再現→修正→テスト追加までの変化 |
スキル | ロゴの羅列 | 用途と深さ(触った/実装/運用) |
リンク | リポジトリだけ | README整備+コマンド+スクショ |
2) 面接の話し方(短い型で整える)
話が長くならないよう、以下の順で落ち着いて伝えます。 前→課題→対応→後→学び
- 例)「仕様が曖昧で不具合が再発(課題)。同値分割で受入基準を言語化し、E2Eを追加(対応)。再発ゼロに(後)。次回はログ設計から先に置く(学び)。」
よく出る質問の意図と答え方
質問タイプ | 面接側の意図 | 伝える観点 |
---|---|---|
自己紹介 | 強みと再現性 | 最近の成果→得意→今後やりたい開発 |
困難の克服 | 学習と改善 | 失敗→学び→仕組み化(テスト/README) |
技術選定 | 思考の筋道 | 候補→評価軸→決定→代替案 |
チーム経験 | 協働の素地 | Issue/PR/レビューの運用経験 |
3) コーディング課題・技術試験のコツ
勘違いを減らすため、最初の3分で整理してから手を動かします。
- 入力・出力・制約・エッジを口頭で確認
- まず正しさ、次に読みやすさ、余裕があればテスト
- READMEに実行方法と意図をひと言添える
- 時間配分:設計10%/実装70%/テスト15%/README5%
4) 逆質問で確かめたい4点(目的つき)
最後に数分。働くイメージをやさしく立体化します。
- 配属の決まり方と例外時の扱い(配属の透明性)
- レビュー体制・頻度・具体例(育成と品質の文化)
- 直近1年の離職率と理由(チームの健全性)
- 残業の中央値と繁忙期(学習時間の確保)
5) 不採用時の見直し(ミニKPIで感情を整える)
次の応募を強くするため、数値で分かりやすく整理します。
観点 | 目安 | 次の一歩 |
---|---|---|
書類通過率 | 20〜30% | 要約を改善/リンクを上部に/スクショ追加 |
一次通過率 | 30〜40% | 事例の短文化/“学び”の一言を追加 |
課題の評価 | 再現性の指摘 | README強化/最小テストを同梱 |
内定までの応募数 | 8〜15社 | 比較表を作り、狙いを絞る |
年収レンジと条件設計
年収は金額だけの勝負ではなく、“役割・評価・働き方”まで含めた合意です。 交換できる条件を複数用意すると、納得感のある着地に近づきます。
1) レンジづくりの3ステップ
視界をクリアにするため、進め方を簡単に整理します。
- 初期レンジの仮置き(市場価値診断+現年収+希望)
- 交換候補を増やす(役割・評価サイクル・働き方・学習支援)
- 伝え方を用意(根拠→希望→交換条件の順)
2) 合意を左右する要素
項目 | 例 | 観点 |
---|---|---|
基本給 | 月給レンジ | レンジ幅と昇給の仕組み |
賞与/評価 | 半期/年次 | 評価項目の透明性 |
役割 | 設計/レビュー/自動化 | 範囲の広さ=伸びしろ |
働き方 | リモート・コアタイム | 学習との両立度 |
時間 | 残業の中央値 | 月の中央値で判断 |
学習支援 | 書籍/カンファ/機材 | 自走の後押し |
配属透明性 | 決め方・例外対応 | ガチャ回避 |
福利厚生 | 住宅/通勤/育児 | 生活の安心度 |
3) 交渉の言い回し(柔らかいサンプル)
会話が硬直しない表現を先に用意しておくと安心です。
- 「経験と直近の成果から◯◯〜◯◯万円を想定しています。設計やレビューまで担える場合は上限寄りでご相談できると嬉しいです。」
- 「評価サイクルやレビュー体制との組み合わせで、金額以外の調整も前向きに考えたいです。」
- 「学習支援や勤務形態についても、成果が出しやすい形で一緒に考えられれば助かります。」
ケーススタディ(成功/失敗の対比)
同じスタートでも、積み上げ方で景色が変わります。 ここでは、よくある2つの進み方を比べて、分かれ目を見つけます。
1) ケースA:成功に近づいた例
行動の流れを時系列で。
- 1か月目:TypeScript基礎/CRUD/README雛形/毎週Push
- 2か月目:E2Eデモ/OSSに小PR/ブログ2本/Issue運用
- 3か月目:副業でフォーム改修/職務経歴を“改善の物語”に更新/応募開始
- 結果:SDET枠で内定。入社3か月で小機能の実装担当に。
2) ケースB:伸び悩んだ例
悪気がなくても起きやすいつまずき。
- 技術を転々/非公開リポジトリ/作業の羅列
- 配属未定の求人で入社→再びテスト固定
- 不採用時の振り返りゼロで疲弊
3) どこで差がついたか
観点 | ケースA | ケースB |
---|---|---|
公開 | 毎週Push・README更新 | ローカルに溜まる |
学び | 言語1つを深掘り | ツールを渡り歩く |
証拠 | 失敗→修正→テスト追加 | 動くが壊れやすい |
外部接点 | OSS/副業で小実績 | 接点がない |
選考での語り | 物語(前→課題→対応→後) | 作業の羅列 |
求人の見極め | 配属の透明性を確認 | 配属未定で入社 |
派手さより“連続する小さな公開”。毎週の更新が、自信と評価をゆっくり底上げします。
FAQ(トラブルシューティング形式)
困りごとは「症状→原因→すぐやる対処→次の一歩」で整えると、落ち着いて動けます。
症状 | あり得る原因 | すぐやる対処 | 次の一歩 |
---|---|---|---|
書類が通らない | 要約が弱い/リンクが見づらい | 要約を3〜5行で刷新 | READMEにスクショ・コマンド追加 |
課題で時間切れ | 仕様確認不足/欲張り設計 | 入出力・制約を先に確認 | 正しさ→読みやすさ→テストの順 |
面接で詰まる | 長く話しすぎ | 前→課題→対応→後→学びで短文化 | 録音して言い回しを調整 |
方向に迷う | 情報過多 | 90日は言語1つに固定 | 用途×言語の相性表で再確認 |
継続できない | 計画が重い | 平日30–60分+週末2–3時間 | 週間リズム(実装→テスト→README→振り返り) |
求人が怖い | 赤信号の見落とし | 配属・評価・残業中央値を確認 | 比較シートで見える化 |
年収交渉が不安 | 伝え方の準備不足 | 初期レンジ+交換条件をメモ | 穏やかな言い回しを用意 |
Gitが苦手 | ブランチ運用が曖昧 | 小さなPRを自分に出す | Issue/PRテンプレを整備 |
テストが書けない | どこから書くか迷う | 失敗事象を再現テストに | 単体→統合→E2Eの順で拡張 |
すぐ使える連絡テンプレ
選考辞退: 「このたびは選考の機会をありがとうございます。検討の結果、別の機会を優先することにいたしました。今回のご配慮に心より感謝しております。」
日程調整: 「候補日程をありがとうございます。◯/◯(◯) 19:00〜、または◯/◯(◯) 20:00〜が可能です。難しい場合は近い時間帯のご提案をいただけますと助かります。」
まとめ:小さく作って出す——90日で“開発側の土台”をつくる
目標は“完璧”ではなく、“前へ進む”こと。 小さな完成を重ね、証拠を残し、穏やかに選び続ければ、道は自然に開けます。
1) 要点
迷いを減らすため、核となる考えを短く整理します。
- テスト経験は資産:設計・レビュー・自動化に直結
- 公開の反復が説得力:GitHub・README・テスト
- 選び方が未来を変える:配属の透明性/レビュー文化/残業の中央値
2) 今日の一歩
初速は小さくてOK。積み上がるほど強くなります。
- GitHubに新規リポジトリを作る(READMEだけでもOK)
- 最初のミニアプリ題材をメモ(ログイン+CRUDなど)
- 求人比較シートのひな形を作る
3) 初週のミニ計画(7日)
日 | すること | ゴール |
---|---|---|
1日目 | 環境整備(Lint/Format) | 気持ちよく書ける状態 |
2日目 | 画面 or APIのたたき台 | 触れるものを置く |
3日目 | 入力検証・例外 | 壊れにくさの土台 |
4日目 | 検索 or ページネーション | 基本導線の充実 |
5日目 | 最小E2Eテスト | 正しさの担保 |
6日目 | README・スクショ整備 | 他者が動かせる |
7日目 | 振り返り・次の1タスク決定 | 連続性を保つ |
小さな制作と公開をくり返す。その積み重ねが“作る側のITエンジニア”への一歩になります。