SESエンジニアとフリーランスは、どちらもITエンジニアとして現場で働く点は共通していますが、報酬の仕組み・自由度・責任範囲には大きな違いがあります。
仕事内容そのものは似ていても、「誰が条件を決めるのか」「どこまで裁量を持てるのか」「安定を重視するのか、それともリターンを取りにいくのか」で体験は大きく変わります。
だからこそ大切なのは「自分にとって何を優先したいか」という軸を持つことです。ここで押さえておきたいのは次の3つです。
- 年収と単価の“物差しの違い”(年収=税込年収/単価=税抜月額が一般的)
- 契約形態(雇用/準委任/請負)が責任範囲・交渉力・働き方にどう影響するか
- 早見表で主要項目を比較し、自分が重視する条件を仮決めしてみること
また、誤解されやすい部分も先に整理しておきましょう。
- 「フリーランス=常に高単価」ではない。 商流や担当範囲、稼働率によって差が出る
- 「SES=スキルが伸びない」一択でもない。 現場の選び方や学習設計次第で十分に伸ばせる
- 「客先常駐の現場感」は両者で似ることが多い。だからこそ交渉できる余地が結果を分ける
読み進めていくうちに、これまで抱えていた疑問や不安が少しずつ整理されていくはずです。白黒を急いで決めなくても構いません。比較という“ものさし”を持つことで、自分に合った選び方が自然と見えてきます。
迷っている今の時間も、きっと次の一歩につながる大切なプロセスです。これから一緒に考えていきましょう。
- 20代後半〜30代前半のITエンジニア:今より年収や成長スピードを上げたい方
- 在宅/リモート勤務を望む人:通勤時間を減らし、学習や副業に充てたい方
- 経歴や実績の見せ方を整えたい人:成果物・GitHub・技術記事などを準備できる、またはこれから作りたい方
まずは基本を整理:SESとは?フリーランスとは?雇用契約・準委任・業務委託の違い
SESエンジニアとフリーランスを比較する前に、まずは「言葉の意味」と「契約の違い」を整理しておきましょう。ここが曖昧なままだと、判断の基準がぶれてしまうことがあります。
用語の整理
それぞれの働き方がどういうものなのか、基本的な定義をシンプルにまとめます。
- SES(System Engineering Service)
企業に雇用され、客先で準委任契約の業務提供を行う働き方。給与は固定給+残業が基本。社会保険・有休など会社の制度が適用。 - フリーランスエンジニア(個人事業主)
企業と業務委託(準委任/請負)で契約。報酬は月額単価(例:70〜120万円)が中心。保険・税務は自前で管理。
契約形態ごとの“効きどころ”
次に、契約の種類によって「どこに効き目があるか」を比較してみます。
観点 | 雇用(SESの自社と) | 準委任(現場と) | 請負(現場と) |
---|---|---|---|
立場 | 従業員 | 事業者 | 事業者 |
責任 | 労務提供 | ベストエフォート(稼働) | 成果物の完成責任 |
報酬 | 給与+残業 | 月額固定+精算幅(例:140-180h) | 納品・検収基準 |
指揮命令 | 会社→従業員 | 形式上なし(実務で調整) | なし |
変更対応 | 異動・配属で吸収 | 契約更改で調整 | 追加契約で明確化 |
現場でよくある「仕様変更」の場面を例にすると違いが分かりやすいです。
- SES雇用:自社ルールで残業や配属調整。本人交渉の余地は小さめ
- 準委任:追加稼働の精算やスコープ再調整で対応。本人が直接交渉しやすい
- 請負:契約外は別途見積り。仕様確定前の曖昧さに弱いが、範囲明確なら強い
SESは“会社が守る”、フリーランスは“契約が守る”という違いがあります。守られ方が変わるからこそ、交渉の前に立つ主体も変わってくるのです。
【早見表】SESとフリーランスの違い比較表(年収・単価・福利厚生・残業・案件獲得)
SESは「安定と制度」に強みがあり、フリーランスは「裁量とリターン」を追いやすい立場にあります。ただし、どちらも現場次第で状況が大きく変わるという共通点があります。
項目 | SES(雇用) | フリーランス(個人事業主) |
---|---|---|
年収の目安 | 380〜550万円 | 年収換算 700〜1,200万円(単価×稼働) |
月額の基準 | 給与(固定+残業) | 月額単価 70〜120万円が目安 |
案件獲得 | 会社の営業が主導 | 本人/一次エージェントが主導 |
稼働安定 | 高め(待機も給与) | 契約更新依存。空白の管理が鍵 |
福利厚生 | 社保・有休・休業補償 | 原則なし(民間保険・共済で補完) |
学習支援 | 研修・補助制度あり | 自費だが経費計上可 |
交渉権限 | 限定的(等級・規定) | 広い(単価・稼働・環境) |
リモート可否 | 現場ルール依存 | 交渉で決まりやすい |
支払いサイト | 月末締・翌月25日など | 30〜45日が多い |
税務・保険 | 会社が手続き | 確定申告・国保/年金を自前 |
有給・病欠時 | 収入維持しやすい | 無収入リスク(保険で補完) |
評価・昇給 | 制度・等級次第 | 実績と交渉力次第 |
- SES:安定や制度を重視し、チームで学びながら働きたい人
- フリーランス:報酬や働き方を自分でデザインし、裁量を広げたい人
制度や福利厚生に守られたいならSES、自分の条件を交渉して作りにいきたいならフリーランスが有利といえます。
年収・単価相場のリアル|SES平均年収/フリーランス月単価の目安と上振れ条件
フリーランスが有利に見えるのは、条件を“設計できた場合”です。商流・担当範囲・稼働条件の3つをどう整えるかによって、大きな差が生まれます。
1) SESの年収レンジ
SESで働く場合の年収目安と、その増減要因をまとめます。
- 総額:380〜550万円前後(地域・等級・残業で増減)
- 上振れ条件:指名参画、上流寄りの役割、評価等級UP、受託/自社開発への転籍
- 下振れ要因:待機長期、商流が深い、汎用性の低い業務への固定化
2) フリーランスエンジニアの月単価レンジ
フリーランスの場合の月単価と、高単価につながる条件を整理します。
- 準委任:70〜120万円/月がボリュームゾーン
例)80万円×12か月=売上960万円(税・経費控除前) - 高単価帯の傾向:商流浅め(直請け/一次)、要件定義〜設計の上流、モダン技術×実績、チームリード可
3) 交渉で効く“上振れ条件”
フリーランスとして収入を伸ばしたいときに重視すべきポイントを挙げます。
- 商流を浅くする:一次エージェントや直請けにより取り分を確保。意思決定者と近いと交渉も通りやすい。
- 担当範囲を広げる(境界を明確化):設計・実装・テストの責任範囲を明確にし、見積もり根拠を言語化。リスクをコントロールできる人ほど単価が高い。
- 実績を可視化する:GitHubや技術記事、登壇実績を公開して「依頼しやすさ」を作る。営業コストを減らすことで単価アップと稼働安定の両立がしやすくなる。
4) ざっくり比較シミュレーション
具体的なシミュレーションでSESとフリーランスの収入感覚を比較してみましょう。
パターン | 前提 | 年収/売上の目安 | 補足 |
---|---|---|---|
SES標準 | 年収470万円、残業少 | 470万円(控除後に手取り) | 社保・税は会社経由 |
フリーランス標準 | 80万円×12か月 | 売上960万円 | ここから経費・税金控除 |
フリーランス高単価 | 110万円×11か月(1か月休み) | 売上1,210万円 | 稼働と単価で調整 |
※フリーランスの手取りは、経費設計(学習・ツール・外注・通信・保険)と税務最適化の有無で大きく変わります。言い換えれば「設計できる人」ほど有利になり、設計を怠れば不利にもなり得ます。
- 精算幅(例:140–180h)の下振れリスクと残業の扱いを事前に確認
- 稼働開始前の準備工数(環境構築・ドキュメント)を契約でどう扱うか明確化
- 支払いサイト(30〜45日)に耐えられるキャッシュを確保(目安:生活費+事業費の3〜6か月分)
年収や単価の数値は「どう作るか」で大きく変わります。だからこそ、商流・担当範囲・稼働条件を設計し、変動をリスクではなくチャンスに変えていく姿勢が大切です。
仕事内容の違いと共通点|客先常駐/役割範囲/重要ポジションの可否
SESとフリーランスの仕事内容は、現場レベルでは似通っている部分が多いです。ただし「誰が条件を決めるのか」「どこまで裁量を持てるのか」「責任の重さ」が違いを大きく分け、働き方の実体験を左右します。
1) 共通点
まずは両者に共通する仕事内容の特徴を整理します。
- 客先常駐が中心:多くの案件でITエンジニアは顧客の環境に合わせて作業。アウェー環境での適応力が求められる。
- 受託的な進め方:プログラム作成、テスト設計・実施、仕様変更対応、設計書の更新など、与件に沿ったタスク消化が主戦場。
- キーパーソンになりにくい:契約上、流動枠として扱われやすく、PM・PL・アーキテクトといった意思決定ポジションは限定的。
2) 違い(配属・範囲・責任・自由度)
次に、SESとフリーランスの仕事内容の違いを「配属」「範囲」「責任」「自由度」の観点で比較します。
観点 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
配属の決まり方 | 会社の営業・配属会議 | 自身(+エージェント)と企業で直接交渉 |
役割・範囲 | 事前に決まった職務に従う | 契約時に範囲・稼働条件を細かく調整 |
責任の重さ | 上長や顧客側が意思決定、責任は相対的に軽い | 範囲が広がるほど成果・品質への責任が重くなる |
自由度 | 技術・現場選択の自由は小さい | 技術・働き方・現場の選択肢が広い |
3) 役割×工程の「担いやすさ」
役割や工程ごとに、SESとフリーランスで担いやすさがどう変わるかを整理すると次の通りです。
工程/役割 | テスター | 実装担当 | 設計担当 | 技術リード |
---|---|---|---|---|
SES | ○ | ○ | △ | △ |
フリーランス | ○ | ○ | ○ | △〜○(交渉・実績次第) |
日々のタスクは似ていても「条件を誰が握るか」によって体験は大きく変わります。交渉や選択の自由度が高いほど、担当範囲は広がり、同時に責任も増していくのがフリーランスの特徴です。
メリット・デメリットを整理|自由度・安定性・成長機会を軸に評価
自由・安定・成長機会の三角形で見ていくと、SESは安定や制度面で安心感を得やすく、フリーランスは自由度や報酬を重視しやすい傾向があります。どちらにも強みと弱みがあるので、自分が何を優先したいかを軸に考えてみると選びやすくなります。
1) フリーランスエンジニア
まずはフリーランスとして働く場合の「良い点」と「気をつけたい点」をまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
収入の上振れ余地:月単価70〜120万円と高めを狙える。 働き方の柔軟性:リモートワークや週稼働の調整、副業など自分で設計できる。 技術・領域選択:得意分野に寄せた案件を選びやすく、学びも効率的。 | 収入の変動リスク:案件が途切れると収入がゼロになる可能性も。 社会保障は自前対応:保険・年金・休業補償は基本的に自分で準備。 孤立しやすさ:学習や評価の仕組みを自力でつくる必要がある。 |
2) SESエンジニア
次にSESで働く場合のメリットとデメリットを整理します。
メリット | デメリット |
---|---|
案件探しの手間が少ない:営業がアサインを調整してくれる。 収入が安定しやすい:待機中も給与が出るため、キャッシュが安定。 制度のサポート:研修や書籍補助、社保・有休などが利用できる。 | 案件ガチャの可能性:希望と違う現場になることもある。 専門性が伸びにくいことも:現場によっては汎用的な作業が中心になりやすい。 自由度は低め:技術や働き方の選択肢は限られやすい。 |
3) ざっくり比較早見表
最後に、観点ごとに比較したイメージを早見表にしました。
観点 | SES | フリーランス |
---|---|---|
収入の伸ばしやすさ | △ | ○〜◎ |
収入の安定性 | ○〜◎ | △ |
福利厚生 | ○〜◎ | △(自前) |
自由度(技術/働き方) | △ | ○〜◎ |
学習投資の裁量 | △ | ○〜◎ |
制度の安心感を重視するならSES、自分で条件をつくって可能性を広げたいならフリーランスが向いています。大切なのは「どの観点を自分が大事にしたいか」を整理することです。
将来性・キャリアパス比較|短期(収入)・中期(市場価値)・長期(独立/管理職)
意思決定に迷ったときは、時間軸を分けて考えると整理しやすくなります。短期は収入、中期は市場価値、長期はキャリア像という切り口で比べてみましょう。
フリーランスエンジニアとSESエンジニアのキャリア比較
期間 | フリーランスエンジニア | SESエンジニア |
---|---|---|
短期(収入) | ・単価交渉や浅い商流案件で即+200万円以上の年収増も可能 ・案件次第でスピード感ある収入アップが期待できる | ・昇給は会社の評価制度や査定に依存 ・大幅な年収アップは難しい |
中期(市場価値) | ・提案力・交渉力・実績公開(GitHub/記事)が市場価値に直結 ・スキルを外部に見せやすい | ・評価は社内制度に紐づきがち ・外部市場での評価が高まりにくい |
長期(キャリア像) | ・法人化・受託チーム化・コンサル・教育など事業拡張の道がある ・働き方を自由にデザインできる | ・PL/PM・部門マネジメント・社内SEなど安定ポジションに進める ・長期的な安定や管理職の道が描きやすい |
4) ロードマップ例
キャリアのゴール別にステップをイメージすると以下のようになります。
ゴール | 推奨ステップ(例) |
---|---|
高収入×技術深掘り | 得意領域特化 → 実績可視化 → 直請け比率UP |
安定×マネジメント | SESでPL/PM→社内SE/情報システム→管理職 |
自由×事業化 | フリーランス→小規模受託→法人化→採用/育成 |
短期的に収入を伸ばしたい人にはフリーランス、長期的に安定や管理職を目指したい人にはSESが向いています。自分の時間軸を意識して考えてみましょう。
リスクヘッジと中間選択肢|副業から試す・エージェント併用・受託/社内SE経由
「独立か、会社員か」と二択で悩む必要はありません。橋渡しの選択肢を取ることで、不安を和らげつつ挑戦することもできます。
1) リスクヘッジ
リスクを抑えるために役立つ工夫を挙げます。
- 副業トライ:週1〜2日の案件で小さく体験。
- キャッシュの確保:生活費+事業費の3〜6か月分を準備。
- 仕組み化:会計ソフトや請求テンプレで運用を安定させる。
2) 中間選択肢
二者択一に迷うなら、こうした中間的な道もあります。
- エージェント併用フリーランス:案件紹介と福利厚生サポートを組み合わせる。
- 受託開発への転職:裁量を持ちながら、営業や契約の学びも得られる。
- 社内SE経由:安定基盤でスキルを横展開しやすい。
3) ステップ例(6〜12か月)
実際に段階的に移行する場合の流れを示すと次のようになります。
- 現職での成果を棚卸しし、GitHubや記事で実績化
- 副業で小規模案件を経験(要件整理〜実装〜請求)
- 長期案件を1〜2件並行してキャッシュフローを安定
- 引継ぎ計画を整えた上で、独立や転籍へ移行
少しずつ準備を重ねれば、独立の「怖さ」も十分コントロールできます。焦らず、着実に歩むことが安心につながります。
体験談・ケーススタディ|年収+200万の成功例と、案件獲得に失敗した反面事例
フリーランスやSESへの転身を考えるとき、実際に「うまくいった人」と「つまずいてしまった人」の違いを知ることはとても参考になります。ここでは成功と失敗の両方のケースを紹介し、その分岐点にどんな要素があったのかを整理します。
成功例:29歳・SES→フリーランス
- 事前に要件定義〜実装の成果物を整理し、GitHub/技術ブログを整備。
- 一次エージェントで商流浅め・月80万円の案件に参画。
- 面談で役割境界(設計/実装/レビュー)を明確化し、残業方針も合意。
- 年収450万→650万に。学習時間を週8〜10時間確保しスキルも伸長。
失敗例:31歳・独立→半年で再就職
- ポートフォリオが未整備、応募はすべてエントリー頼み。
- 稼働開始までのキャッシュ計画が甘く、支払いサイト45日に耐えられず失速。
- 精算幅や範囲の交渉をしないまま契約し、工数超過で消耗。
- 副業→本業の段階を踏まず、準備不足が露呈。
可視化された実績・商流の浅さ・契約の境界設定・キャッシュ管理。この4つを事前に整えておくかどうかで、成功率は大きく変わってきます。
よくある質問(FAQ)|初案件の取り方・社会保険・税金・戻りやすさ・時給換算
フリーランスやSESに挑戦しようとすると、最初に浮かんでくるのは制度やお金、案件獲得まわりの疑問ではないでしょうか。ここではよく聞かれる質問をまとめて整理しました。判断の助けになるよう、一つひとつ見ていきましょう。
1) 初案件はどう取る?
初めての案件獲得のステップは次のような流れが基本です。
- エージェント登録→面談→推薦→企業面談が王道。
- 書類には職務経歴(数値・担当範囲)+GitHub/記事リンクを添えると効果的。
- 直営業は実績が可視化されてから挑戦したほうが成功率は高い。
2) 社会保険はどう違う?
社会保険の仕組みの違いを整理しておきましょう。
- SES:健康保険・厚生年金が中心。休業手当など制度の手厚さがある。
- フリーランス:国民健康保険・国民年金が基本。必要に応じて小規模企業共済や民間保険で補完する。
3) 税金は何をすれば?
税務対応の基本は次のとおりです。
- 確定申告(青色推奨)、必要経費の把握、インボイス対応の要否確認。
- 会計はクラウド会計+月次入力を使うと効率的。必要なら年1だけ税理士に頼るのもあり。
4) フリーランスから正社員に戻れる?
「一度フリーランスになったら戻れないのでは?」という不安もありますが、実際は逆です。
案件実績・推薦の声・品質事例を示せれば、むしろ評価が上がるケースもあります。
5) 時給換算の目安は?
イメージをつかみやすいように、時給換算の目安を比較してみましょう。
働き方 | 前提 | 時給目安 |
---|---|---|
SES | 年収450万円/月160h | 約2,340円 |
フリーランス | 月80万円/月160h | 約5,000円 |
6) 面談で何を聞けば?
面談時に確認しておくと安心なポイントをリストアップしました。
- 範囲(設計/実装/レビュー)
- 精算幅
- 残業上限
- 利用技術
- レビュー体制
- リモート可否
- 支払いサイト
不安や疑問をあらかじめ整理しておくと、ギャップが少なく満足度の高い選択につながります。「よく分からないまま動いてしまった…」という後悔を減らすためにも、こうした基本を押さえてから次の一歩を踏み出していきましょう。
【実践】SESからフリーランスに転身する方法ステップ
独立に挑戦する時は、一気に飛び込むよりも「準備 → 検証 → 移行」と段階を踏む方が安心です。数字やドキュメントに落とし込みながら進めることで、再現性のある準備になります。ここでは90日を目安にした3ステップを紹介します。
1) 0–30日:準備(可視化と土台づくり)
まずは、自分の強みや実績を形にし、生活基盤や契約環境を整えるところから始めます。
- プロフィール整備:職務経歴(期間/役割/規模/成果を数値化)、顔出し不要でも実績はURLで可視化(GitHub・技術記事・登壇資料)。
- 強みの言語化:得意領域×利用技術×責任範囲(例:Webバックエンド/Java・Spring/要件〜設計〜実装)。
- 契約・請求の土台:請求書テンプレ/基本契約ひな形(準委任)/NDA をフォルダ化。
- 会計環境:クラウド会計(科目の初期設定/レシートの撮影ルール/月次締め日)を決める。
- キャッシュ計画:生活費+事業費の3〜6か月分を目安に口座を分ける(事業用/生活用)。
2) 30–60日:検証(小さく稼働してギャップを洗い出す)
次に、副業や短期稼働を通して「想定と現実のギャップ」を確認していきます。
- 週1–2日の副業案件で“契約〜稼働〜請求〜入金”を一周。
- エージェント面談(2〜3社):希望単価/稼働率/技術/リモートを具体化し、商流と精算幅を確認。
- 役割境界:設計/実装/レビューの範囲、残業の扱い、コードオーナーシップ。
- プロセス:レビュー体制/仕様変更の運用/ドキュメント要件。
- 環境:リモート可否/PC貸与有無/セキュリティルール。
3) 60–90日:移行(本稼働の条件を固める)
最後に、本格的にフリーランスとして働くための条件を固め、現職からスムーズに移行します。
- 条件の最終調整:単価・精算幅(例:140–180h)・支払いサイト(30–45日)・稼働開始日を確定。
- 現職の退職準備:引継ぎパケット(後述テンプレ)を用いて静かに退場。社内・客先の連絡網や次アクションを明記。
- 開業・税務:開業届/青色申告承認申請を提出、インボイス制度の要否は売上見込みと取引先要件で判断。
- 案件サマリ(目的/現状/期限)
- 未完了タスク一覧(担当/期日/次アクション)
- 資料・資産の場所(リポジトリ/ドライブ/権限)
- 連絡先(社内/客先/ベンダー)
- リスクと回避策(既知の課題/暫定運用)
- 2週間の移行プラン(日程・承認者)
「準備(可視化) → 副業で検証 → 条件確定 → 退職・開業」と進めることで、空白期間や想定外のトラブルをぐっと減らせます。大切なのは焦らず、少しずつ土台を整えて安心して移行していくことです。
失敗しないエージェント活用術|非公開求人・単価交渉・商流・稼働率の見極め
フリーランスにとって「誰から案件を受けるか」はとても大切です。単価や裁量、働きやすさに直結するからこそ、エージェントの選び方や面談での確認事項をきちんと整理しておきましょう。
1) エージェント選定の基準
まずは、エージェントを選ぶときにチェックしておきたい基準をまとめます。
- 商流:直請け/一次の比率、リファレンス企業の質
- 透明性:マージン開示、面談フィードバックの具体性
- 支援:契約・法務・税務の周辺サポート(任意保険・福利厚生相当)
- 案件傾向:技術領域/フルリモート比率/稼働率の実績
2) 面談で確認するポイント
次に、面談の場で確認しておくと安心なポイントを整理しました。
- 役割範囲:設計/実装/レビュー/顧客折衝の比率
- 精算条件:140–180h等の幅、下限割れ時の扱い
- 残業上限:月平均、繁忙期の想定、代替休の運用
- 支払いサイト:月末締め翌月末など、立替が必要な費用
- 更新条件:評価基準、延長判断のタイミング
3) 単価交渉の型(会話例)
単価交渉に慣れていない方のために、会話のイメージ例を用意しました。
- あなた:「要求スコープが設計含みのため、95→105万円を希望します。精算は150–190hを提案可能です」
- 先方:「厳しいです」
- あなた:「では100万円/150–190h、残業上限20hで合意できれば即決します」
4) 赤信号・黄信号
最後に、契約前に気をつけたい“危険サイン”を挙げておきます。
- 赤信号:商流不明、精算幅の下限が広すぎる、残業上限が曖昧、差戻し多発のレビュー体制
- 黄信号:初回から常駐前提の常時出社、支払いサイト45日超、NDA未提示
商流・精算・残業・支払いサイト。この4つを数字で確認できれば、条件面での失敗はぐっと減らせます。
税金・社会保険の基礎|確定申告・経費・国保/年金・小規模企業共済
独立すると、税金や保険のことが急に自分ごとになります。「難しそう」と感じるかもしれませんが、毎月のルーティンにしてしまえば不安は小さくなります。ここでは基本の流れをわかりやすく整理しました。
1) 年間スケジュールイメージ
1年を通してどんな作業があるのか、時期ごとに並べるとイメージしやすくなります。
月 | やること |
---|---|
毎月 | レシート取込/口座・カード連携、月次締め |
1–2月 | 残高合わせ、減価償却の確認 |
2–3月 | 確定申告(青色推奨)/納税 |
4–6月 | 住民税通知の確認/資金繰り見直し |
随時 | インボイス要否・保険見直し・共済掛金調整 |
2) 社会保険・年金の考え方
社会保険や年金も、自分で選びながら組み合わせる形になります。
- 健康保険:国民健康保険(自治体ごとに保険料が変わる)
- 年金:国民年金+老後の補完に小規模企業共済/iDeCoを活用
- 休業リスク:民間保険(所得補償など)でカバー
毎月の「記録 → 締め → 見直し」を回していけば、確定申告は特別なイベントではなく“ただの作業”になります。制度は組み合わせ次第で安心感を作れるので、焦らず自分に合った形を見つけていきましょう。
まとめ|どっちがおすすめ?結論と選び方(価値観×ライフプラン×市場性で最適解)
最終的な答えは「人それぞれ」ですが、判断の軸を整理すると迷いが減ります。
たとえば、価値観(自由や裁量を重視するか、安定や制度を優先するか)、ライフプラン(貯蓄状況や家族構成、働ける時間帯)、市場性(自分のスキルの希少性や需要、商流の浅さ)といった3つの観点に分けて考えると、自分に合った方向性が見えてきます。
自由やリターンを重視するならフリーランスに寄りやすく、安定や制度面での安心を大切にしたいならSESを選びやすいでしょう。
どちらか一方だけに決めるのではなく、まずは副業から試して段階的に移行するという“中間解”も現実的で、多くの人にとってリスクを抑えやすい選択肢になります。
大切なのは、今の自分にとって何を優先したいのかを整理し、その軸に沿って働き方を選んでいくことです。